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技術紹介

木造住宅の市場はいま、どうなっているか?
専門家にうかがってみました。

危機的な経済状況のなか、
住宅産業には何が一番重要になるか?
住宅ジャーナリスト・福原正則
 新年を迎えるにあたり、まず考えることはこれから始まる一年間がどのような結果に終わるかと言うことである。年頭の期待や抱負は常に結果を求めるものであるが、2009年ほど見通しが悪く、一年後の成果を計算できない年はないのではないかと思う。
世界経済はまさに未曾有の危機的状況となっている。その中で日本経済がどうなるのか。住宅業界では一昨年の確認申請厳格化による市場大混乱からようやく立ち直り、いくらか明るさを取り戻していたところだった。それが11月あたりから急ブレーキがかかった。ビルダーに聞いても、プレカット工場、建材流通、資材メーカーに取材しても状況は全く同じだ。11月後半からぴたりと需要が止まったというのである。業績が好調だったところもそうでないところも、黙って2割減少していると答えている。前月まで対前年比10%前後という勝ち組の会社でもそうした状況であり、急ブレーキの激しさに驚いている。だから何とか水面下で努力してきた多くの会社はそれ以上に落ち込んでいるはずだ。
何故そうなったのか。答えは簡単だ。第一に消費者マインドが急速にしぼんだことだ。これは住宅だけの話ではないが、世界同時不況の影響が国内産業に出るのはもう少し後という時代ではない。また、住宅は消費者の最高額の買い物である分、消費低迷の影響一番受けやすくなるということもあるだろう。
第二に住宅業界への不信感が再燃、さらに強まったことだ。世間の目は耐震偽装事件以来、非常に厳しくなっているが、ここにきてゼネコン・工務店の相次ぐ倒産で、経営的・技術的に信頼でき、しかも大手ほどコストがかからない“頼りがいのある会社”が望まれるようになった。そのため、消費者は一段と厳しい目で選別を始めているのだ。
加えて住宅購入希望の消費者の間に、来年10月からスタートする「瑕疵担保責任保険制度」への期待が高まってきた。今後は、住宅保証機構による消費者向けの啓蒙活動もスタートするが、すでに消費者相談窓口には昨年に比べ130%アップと、倍以上の問い合わせや相談が寄せられている。今時は如何に安心できるかの住宅取得を必死に望んでいるのだ。だから、購入を先送りしてでもその時期に合わせたいという気持ちがあるのかもしれない「瑕疵担保責任保険」の実施を前にして、実際にはすでに保険が動き出しているのだが、不況のタイミングでもあり買い控えに動く心理が働くようだ。
第三は消費者自身の信用力の減少だ。これまで住宅市場を支えてきた世代が急速に信用力を落としている。最近は住宅ローンを申し込んでも、3人に1人か4人に1人しか融資を受けられない状況だ。特にこれから結婚・子育てを迎える30代の住宅一次取得者の層では、ますます住宅ローンは狭き門になっている。住宅ローンが借りづらくなった背景には、昨年から施行された「改正貸金業法」の影響もあるようだ。これは資格要件の厳格化や総量規制などで消費者ローンなどの多重債務から守ろうという改正で、住宅ローンは対象外なのだが、金融機関の審査が厳しくなった背景にはこうしたことも大きく影響していると言われている。
しかし最大の原因は、パートや派遣でコストダウンを図ってきた昨今の企業活動やそれを認めてきた政治である。中堅勤労者の崩壊は、住宅業界としては大きな損失である。これからの市場を考える上で重要な視点である。

 新年の暗い話ばかりをしていてもきりがない。明るい方の話題は、何と言っても200年住宅=「長期優良住宅普及促進法」の成立である。半年遅れで11月後半にようやく成立した。国交省では即法律を施行し、4月から長期優良住宅の認定を開始する意向である。
前回もこの欄で話題にしたとおり、すでに200年住宅の啓蒙普及のための事業として「超長期優良住宅先導的モデル」事業を進めており、88の提案が動き出している。来年度の募集も1月19日から始まる予定だ。予算も前回の1.5倍の200億円だから期待したいが、11月に発表された第2回のモデル事業採用発表を見ると、提案内容がハードよりも維持管理などのソフト方面の新規性、先導性が評価されており、若干ハードルが高いとことがわかった。だからハード=住宅性能で勝負するのであれば、法律も成立したことであるし、今後は大いに長期優良住宅の認定取得を目指すべきだと思うのである。
というのも、先導的モデル事業に何とか知恵を絞って採用されるよりも、住宅ローン減税の優遇措置を受ける方が遙かに効果的であるからだ。まだ予算は通っていないが、長期優良住宅で年間最大600万円、一般住宅で500万円が税額控除される。期間はいずれも10年程度になるから、控除総額を考えると消費者の購買意欲を大いに刺激するはず。さらに言えば、施行が4月以降でも1月にさかのぼって適用されるとのことであり、早くもハウスメーカー等では営業マンがセールストークに組み込んで動き出している。
ただ、いまのところ一般住宅と長期優良住宅の線引きが明確にされていないので、この数ヶ月間着工する物件の仕様次第では困った問題も起きる。今時住宅は高性能が当たり前で、住宅性能評価を受ける建物が多くなった。これらの住宅が、1月にさかのぼって税制優遇を受けようとすると、わずかな仕様の違いで、一般住宅とされかねないのだ。最大で年間控除額は100万円しか違わないと負け惜しみを言っても後の祭りだ。
国交省では長期優良住宅の普及を当初、新築の10%程度にしたいと意気込んでいる。住宅業界では、かつて住宅金融公庫の高耐久仕様があったが、それがいつの間にか当たり前になったという経験を持っている。政策的に長期優良住宅へ誘導しようとしているのだから、今後益々優遇されるのは間違いない。我々もできればスタート時点から対応出来るようにしておいた方が得策であるのは、わかりきったことではないだろうか。


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