
前回この欄でも述べたことだが、国政は内需拡大の柱として矢継ぎ早に住宅需要拡大のための施策を打ち出している。過去最大といわれる住宅ローン減税をはじめ、ローンを使わないで住宅を購入する人のための投資型減税、リフォーム減税、加えて長期優良住宅へ補助・優遇策などだ。これは業界にとっても非常に力強い支援策である。しかし、こんな盛り沢山、てんこ盛りの施策が、誰にとっても十二分に有効に使えるかどうかとなると疑問である。実際、手続きや申請、あるいは条件資格などが面倒くさかったら、やっぱり大手だけが有利ではないのかという疑念が出てきて当然だ。この優遇策を享受出来るのは、ご存じのように2000年以降の住宅関連の厳しい法律や様々な制度をクリアできる住宅だけだからである。またそれが果たして冷え切った消費者の財布の紐を本当にゆるめることが出来るかどうかもまだ見えない。地域の工務店やビルダーなどの中小業者の不安はそこにある。
筆者は先日ある建材販売店で「受注に活用できる大盤振る舞いの国の施策」というテーマの話をした。集まったのは同社のお得意先の工務店など150社ほどで、テーマがテーマだけに熱心に話を聞いてもらった。これまで200年住宅とか長期優良住宅などというと、具体性があるんだかないんだか曖昧な話が多かった。その200年住宅・長期優良住宅と大型のローン減税や補助金がどう繋がっていて、これから住宅を買うお客さんにとっていかに有利であるのか。また、それを地域の工務店の人たちがちゃんと営業活動に使えるように、内容や制度の使い方を知ってもらいたいというのが、その建材販売店の勉強会を開催した趣旨だった。
その建材販売店の社長は「これだけお客さんのためになる制度があってもわからないし、使おうとしても使えない」と地方の工務店の現実を語る。確かに分譲住宅やローコスト住宅は地方でも大きく普及したが、同時にまた厳しい競争を繰り広げてきた。一方では、地縁・血縁など長年の結びつきで商売をしてきたところもいまだに多い。しかし少子高齢化や過疎化、そして地方進出企業の工場閉鎖などで、長年の安定的なお客さんもいなくなっている。いよいよ競争しなければ生き残れない時代が来た、と言っても過言ではないだろう。だから新しい制度を勉強して商売に活かそうというわけだ。この建材販売店の得意先は300社くらいだそうで、そのうち半分近くが集まったのだから、その真剣さに主催した社長も驚いていたようだ。