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木造住宅の市場動向

木造住宅の市場はいま、どうなっているか?
専門家にうかがってみました。

「住宅が欲しい」
と思わせる購買動機が、
今後の市場を左右するのでは?
住宅ジャーナリスト・福原正則
不景気な話ばかりが多い昨今であるが、ようやく空気も暖かくなってきたので何とかしなければならない日本の景気、住宅業界である。国も経済対策に本腰を入れて進めてもらいたいところで、どうなっているんだろうと思っていたら、3月初めに住宅業界へびっくり仰天の対策が打ち出された。
ご存知のように住宅業界では今年10月から瑕疵担保責任保険が義務化されるが、3月9日から23日まで加入申し込みした物件について、瑕疵保険料を半額にするというのだ。高速道路料金を休日一律1000円にするという経済対策では、ETC機器にも補助金が出たのでカーショップなどで品薄状態になるなど、大いに効果が出始めている。で、それに倣ったわけでもないだろうが、同じく国交省からの補助金施策であり、こちらは2週間に限って、申し込みした物件について3万戸まで、保険料の半額を補助しようというのである。これが発表されたのが3月5日、週明けの9日から半額料金の募集開始という慌ただしさで、補助金を受ける瑕疵担保責任法人5社も大いに面食らったようだ。
そんなわけで、今回の瑕疵保険料半額でどんな効果があるのだろうかと、大いに気になるところだ。高速道路の方は、ETC機器への補助金だけでも100万台分、約50億円を補助しようというものだ。瑕疵保険の方は、戸建住宅1戸当たりざっと10万円程度の保険料であるから補助金は5万円程度、3万戸分で15億円ほどだ。住宅業界は、このところの急激な市場低迷で、義務化の瑕疵保険でさえ大きなコストアップ要因として気がかりになっている。そんな中、うまく普及するかどうか大いに心配なのが国交省だ。補助金を出すことで不況対策とするほか、瑕疵保険への加入戸数が大幅に増える状況を一挙につくり出し、厳しい状況下でも保険の手続きがスムーズに行われるかを検証したいというワケのようだ。
まあ、だから申し込みを2週間に限定したのかどうか。どうせやるなら今年いっぱいくらいはして欲しいところだ。中小零細工務店対策として、それらの工務店が建築する10万戸程度に補助を出すだけでも、地方住宅市場での経済効果も大いに上がるだろうし、中小工務店への瑕疵保険義務化の認知・普及も進むと思うのだ。費用もETC機器への補助と同じ50億程度だ。


しかし、そんな対策をしても住宅市場は今までのような形で動かないだろうと筆者は見ている。問題は補助金で工務店や施主の経費負担を軽減することではない。ロハスをコンセプトにした提案性の高いリフォームで年商40億を上げているリフォーム会社の部長は、今の不況と住宅市場について「消費者は購買意欲はあるが、購買動機がない」と分析する。まさにそこに問題があるのだ。
日本もモノ余り時代を迎えて欲しいモノがなくなったと随分前から言われてきた。ただ住宅のみは欲しいモノランキングの常に上位にあり、売れ続けてきた。これまでローコスト住宅が売れ、分譲住宅会社が繁盛し、タマホームが1万棟を超えたのもこのお陰であったと思う。しかし、最近の住宅市場の流れを見ていると、どうも今度こそ本当に欲しい家がなくなってきたのではないかと思うのである。つまりリフォーム会社の部長の言うとおり「購買動機がない」時代に入った感じがする。いくら補助金を出して「購買意欲(お金)」を刺激しても「購買動機(欲しい)」がなければ家は売れない時代になった。その変わり目が今回の不況で一挙に吹き出してきている。
では、これからどんな家が売れるのだろうか。200年住宅(長期優良住宅)は高性能であり、これから大型ローン減税で最優遇を受けるし良さそうだ。中古住宅もリノベーションで若い人たちに人気が出てきたし優遇税制も使える。省CO2省エネ住宅も地球温暖化対策で話題だ。そんなものだろうか。それらは補助金や優遇税制で購買意欲を満足させるだろうが、問題は「果たして購買動機を刺激するのか」ということだ。そこから考えれば答えは自ずから明らかになる。最大のポイントは購買動機を刺激する形と方法だ。筆者が考える答えは、「個性的なデザイン」と「供給方法(建築方法など)」だと思うのである。

最近筆者は、事務所のある浅草橋と原宿・竹下通りの先にある建築事務所を往復する機会が何度かあった。浅草橋はご存知の方も多いと思うが、人形の久月や吉徳などの老舗がある人形問屋街である。一方の竹下通りは10代の女の子が全国から集まるところだ。そこで、この全く異質な2つの町に意外な共通点を発見したというわけである。これが今後の住宅業界に大いに役立ちそうな気がする。
何故欲しいモノがない時代なのにこれらの町に人が集まるのか。浅草橋はひな人形や五月人形のシーズンに大賑わいとなるが、それ以外でも女性がたくさん集まってくる。何故かというとアクセサリーや手芸のパーツ、素材の専門店が非常に多いからだ。バーゲンの時などは専門店のビルを人垣が二重、三重に取り囲み、入場制限があるくらい集まる。竹下通りは、ブランドショップやタレントショップが軒を連ねていたが、それに替って今ではハンドメイドショップが人気である。今時の子供達はモノ余りの中で生まれ育ってきた。身の回りのモノが全て既製品である。だから今の若い世代は既製品としてのブランド品よりも、世界にたった一品しかない手作り製品を求めて、その手のショップに足繁く通う。そんな流行に支えられて竹下通りは相変わらず賑わっている。
浅草橋のひな人形・五月人形は世代を超えて子供の成長を願うという購買動機がある。そして手芸などの部品を求める女性はまさに自らハンドメイドをする人たちだ。以前に比べて素材やパーツの種類は非常に豊富になっているという。それだけ趣味の人口が増え多様になっているということだろう。


住宅は元々一品生産、施主だけのデザイン、機能を実現してきた。それがいつの間にか注文住宅といいながらメーカーのカタログを広げて既製品を選ぶだけとなった。躯体構造にしても、法律などの制約からパターン化する傾向が非常に強くなっている。ハンドメイドと言いつつも、どんどん既製品化してきたのが住宅造りであり、住宅を“商品”などと呼ぶことも多くなった。竹下通りの先にある建築事務所は、エアロハウスという四角い六面体構造の箱を住宅としてデザインしている。もう5、6年前から販売しているが、この1年ほどの間で急に受注が増えてきている。本当に四角い箱を組み合わせて住宅にしているのだから、よほどの物好きでないと買わないデザインであると思う。それが雑誌等に取り上げられたり、今度はテレビ取材を受けるなどで人気が出てきている。それは「他にはないというデザイン」が受けているのだ。
住宅業界、特に地方市場の中小工務店は、市場縮小に加えて、厳しい法律と住宅品質で大変厳しい物作りが要求されている。しかし、それは既製品としての厳しい物作りである。竹下通りと浅草橋に集まる人々は自分にしかないハンドメイドを求めている。住宅もこれからそちらの方向に動くのであれば、まさにハンドメイドという供給方法に特化した家造りが必要である。

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