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木造住宅の市場動向

木造住宅の市場はいま、どうなっているか?
専門家にうかがってみました。

住宅業界にも押し寄せる
     “ネット通販”の波。

住宅ジャーナリスト・福原正則
流通業界は軒並み大幅な売上ダウンとなっているが、通販ビジネスは勢いがいい。特にテレビやネットでの売上の伸びは好調だ。一方住宅建材・設備等でも、この通販の流れが着実に押し寄せている。一般ユーザーがネットで様々なものを買って現場に持ち込むようになった。リフォーム業者に聞くと、施主支給によるIHクッキングヒーターやエコキュート、その他設備機器、キッチンなどの取り付け、設置依頼が非常に多くなっているというのだ。
工務店やリフォーム業者にとって、こうした一般ユーザーは本音を言えば工事手間だけしか取れないので利益にならない、断りたい客である。ただ、最近の厳しい状況ではそんなわがままも言っていられない。いくら営業しても住宅が売れない昨今、住まいづくりに自らかかわってくるこうした消費者は大変ありがたい。今後の市場縮小を考えれば、何とか新築やリフォーム本体のお客につなげたいと思う。ただ、この新しい客層をしっかりつかむには、業界がこれまであたり前に行ってきた建材や設備機器への分掛けは出来ないのでその利益がとれなくなるということだ。つまり、これからは21世紀的な住宅価格の再構築が必要になるということだ。


また一方では、業界内でも積極的にプロユーザー(大工・工務店など)向けのネット販売に取り組むところが多くなってきた。インターネットが華々しく普及し始めた10年ほど前、建材のネット販売も登場したが、その後既存ルートからの圧力や価格の不透明さなどで、成功したとはいえなかった。加えて工務店の信用問題、取引方法や物流などで様々な問題点もあった。そうした事情を乗り越えて、最近またネット販売が増加してきた理由は、価格の安さや商品バリエーションだけでなく、バラ売り・1個でも注文できるし宅配便による現場納品もOKなど、その便利さにある。また決済も前金、代引きなどが一般的なネット販売の普及で当たり前になり、業界でも常識になってきたからだ。
小誌(新・住宅ジャーナル)にコラムを書いているバットマン・高橋氏もネット販売を行っている一人だ。聞くとリアル(地域市場)での建材販売は非常に厳しいとのことだが、ネット販売は伸びているそうだ。取引口数は4500社に増え、月間数百万円の売上があるという。高橋氏によると「まだ建築金物が販売の中心」と控え目な解説だが、ネット販売の将来性には自信がある様子がうかがえる。
そうすると、将来日本の住宅産業では一般ユーザーもプロユーザーもネットで建築資材を自由に調達することが当たり前になるかもしれない。日本だけでなく世界中の建材・設備が現場にやってくる。あとは職人や専門技術者を集めて施工するだけで住宅が出来上がる。
ただ、そこに落とし穴がある。なぜかというと設備や建材は住宅に取り付いて初めて商品価値を持つからだ。躯体にどう取り付けるか=「納まり」をどうつけるかが現場施工技術の要である。これは躯体と材料の特性をよく知らなければうまくいかないことは、現場のベテランならばよく知っていることである。だから「好き勝手なものを現場に持ってきて取り付けてくれと言われたってクレームのもとだ」ということになる。
逆に言えば、それをクリアーできれば誰だってどんなものでも持って来られることになる。ビルトインタイプのドラム式洗濯機を輸入販売しているメイコー・エンタプライズの佐々木社長は、国内メーカーがビルトインからほとんど撤退したのは、水漏れ対策が十分でなかったからだと指摘する。水漏れの原因となるドラムの震動をどう抑えるかという機器性能に加えて、施工上のポイントがある。同社が長年ビルトインを手掛けているのはそのポイントを熟知している賜物であるというのだ。最近はネットを調べて問い合わせてくる客も多い。性能と施工基準が明確であれば、世界のどこからでも製品を持ってきて取り付けることができるというわけだ。


そして、ネットによる住宅資材の調達が当たり前になるためのもう一つの大きな問題は価格である。ネットは一般もプロユーザーも価格を同じ条件で知ることができる。ということは、冒頭で述べたように仕入れ価格の分掛けができにくくなり、仕入れ商品の利益は無くなるのだ。すると、これまで住宅の工事価格を構成する材料費、人件費、諸経費などに分掛けして生み出してきた、わずか20〜30%の粗利益が更に少なくなることを意味する。それでなくても厳しい競争や資材価格の高騰で利益は圧縮している。加えて今後少子高齢化で職人不足になれば人件費も高騰する。そのなかで、これまでのように施主支給でわずかな取り付け費用をもらっていても合わない。ネット上には「施主支給のススメ」などというサイトもあり、ユーザーも増えている。どう対応したらいいのだろう。
21世紀的な住宅価格の再構築が必要だというのは、そうしたモノを販売する人たちが、既存の工事業界の上にタダ乗りをして、自分たちの価格の安さ便利さを展開しているだけだからである。そこには現場施工を担う人々をどう育成し、確保していくかという発想が全くない。ただ売るのみである。この30年間の住宅業界にそれがあったかと言われれば疑問だが、少なくとも今のネット販売ビジネスよりはあると思う。だから、この際工事価格を大幅に改定する必要があると思うのだ。そうすればこの業界でも人材確保、育成ができ、事業を長く発展させることができる。
これまで一般的な地域工務店やビルダーが販売している2000万円程度の住宅では、粗利益が20%程度の400万円、残り1600万円のうち施工に関わる職人の人件費は大工工事で70〜100人工程度である。設備、配管、屋根などの専門工事の人工は大工と大体同数であるから、全体として最大200人工である。日当を2万円と計算しても人件費は最大400万円にしかならない。すると1600万円のうち人件費はその4分の一にもならないということになる。また一方で、直接的な資材関連の費用は1000万円を優に超える。これが現在の住宅価格の構成の基本である。こうした実情を再考して、人件費の部分をふやす。しかも、これをただの人件費にするのではなく、優秀な施工、安心な施工を提供するための技術費や管理費項目として大きく増やしたらどうなるだろうか。これらはすべて利益項目であるが、その中からいくらか人件費に回せばそれだけ優秀な職人も集まるだろう。10月からは瑕疵担保保険の義務化もスタートする。厳しい施工責任が問われる時代になる。そのとき旧態依然とした価格構成のままでいいはずがない。せめて施工に係る人件費の項目は材料費と同等まで持っていく必要があると考えている。21世紀的な住宅価格の再構築とはそこからスタートだと思う。


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