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木造住宅の市場動向

木造住宅の市場はいま、どうなっているか?
専門家にうかがってみました。

住宅産業の明るい未来のために、
いま何が必要なのか?
住宅ジャーナリスト・福原正則
日本の住宅産業、そして工務店は今何をしなければならないのか。すでに人口は減少を始めており、スクラップアンドビルドを繰り返しながら成長を続けてきた日本の住宅産業、住宅ビジネスは、成熟産業を通り越して完全に衰退産業となりつつあるというのが今日の現状である。
これまで住宅産業の中核を担ってきたのは、大手ハウスメーカーでも大工でもなく、"工務店"である。戦後の高度成長期に住宅産業は大きく成長したが、その中で工務店は地域市場での住宅供給を全面的に担ってきた。というのも、過去に何百年にわたって築いてきた伝統的な木造構法と、技術の伝承者である大工技能者を徒弟制度という形で抱えてきたという、住宅産業にとって最も大きな資源を持っていたからだ。
しかし住宅産業は、バブル崩壊後20年間さまざまな問題を抱え停滞した。その停滞の原因となったのは、経済の変動要因を抜いて考えてみると、次の4つが最も大きな問題であると考える。

■ 安かろう悪かろう
まず一番目の問題は、住宅をより多く建設・販売して利益を得るため、消費財と同じ感覚で生産・販売するという商品化が行われたことだ。そのため激しい価格競争が展開され、下請工事業者、職人、資材供給業者を大きく疲弊させる結果となった。また住宅生産の大きな質の低下を招いた。まさに「安かろう悪かろう」がまかり通るとともに、利益優先の「高かろう悪かろう」も横行、加えてこのような風潮から業界人のモラルの低下を招き、さまざまな事件を引き起こし社会から厳しい批判を受けた。

■ 資源の枯渇
二番目の問題は、伝統的な木造構法とその技術の伝承者である大工技能者など、業界の最も大きな資源の枯渇である。技能を持った大工の高齢化、若年入職者の激減はそれに拍車をかけている。特に若年入職者の問題は、少子化だけに理由があるのではなく、業界内での育成問題、他産業に比べて低賃金、ものづくりの意欲・喜びの喪失などが挙げられる。その原因を作ってきたのは、今日の住宅産業、ハウスメーカー、工務店である。蓄積してきた業界の大きな資源の上にただ胡坐をかいて、多くの企業が使うだけ使って商売をしてきたからである。

■ 変わらない現場施工
三番目の問題は、CADソフトや機械プレカットの活用が工場から一歩も出ていかず、現場生産の革新にほとんど結びつかなかったことである。
業界の大きな資源がいずれ枯渇していくとみて、大工技能をコンピュータや機械に置き換えていったCADソフトや機械プレカットは、この20年間大きく成長した。コンピュータで図面が作成され自動機械で加工されたプレカット材は、これまでのように下小屋で大工が手刻みで加工したものと比べると、遙かに高精度で生産性の高いものである。
しかし、そのメリットが何一つ現場で活かされてこなかった。逆に、現場をつかさどる大工に個別対応しなければならず、生産性向上が大きく阻まれてきた。貢献できたことと言えば規模拡大による加工賃の大幅な低下と熟練大工頭脳の減少を補ったくらいである。
現場施工は相変わらず大工中心であり、合理化を目指して様々な工法が開発されてきたにもかかわらず、現場に係る大工人工数は大きく変わることがなかった。これは二番目の問題とも大きく関係する。現場生産を大工による既存の技術蓄積に頼るだけであり、何の改良や批判を加えることなく、その仕組みの上に乗っかって現場生産を任せっきりにしてきたからである。本来であれば、プレカットの生産性、品質が飛躍的に向上した分だけ現場は利益を享受できたはずである。さらに一歩進んでそのことをきっかけにして現場の生産性向上を実現し、消費者とそのメリットを分かち合えたはずである。

■ 標準化の遅れ
四番目の問題は、産業、ものづくりとしての標準化が非常に遅れたことである。産業として国民生活に寄与し大きく飛躍するためには、業界全体として安定した品質と価格を実現しなければならない。現場は常に技術革新と生産性の向上が求められる。1社のみで実現してもそれは産業とは呼ばない。産業となるためには、参加するすべての人が目指すべき基準やスタンダードが必要である。
自動車や家電産業は、ものづくりの技術だけでなく、商習慣や消費者サービスなどほとんどの部分について、ゼロから今日のスタンダードを築いてきた。それは衣料でも食品でも今日大きく成長した業界はすべて同じだ。しかし住宅産業は、自動車産業と同じく20兆円の市場規模を持つものであるのにもかかわらず、業界全体での標準化とはあまり熱心に取り組んでこなかった。特に戸建て住宅の生産は前述したように伝統技術や大工技能といった過去の偉大な資産の上に乗っかってきたものであり、業界のスタンダードは全てそうした資産からの借りものであった。一番目の問題の住宅の商品化では、住宅を商品としながらも客との取引関係は、売買契約ではなく請負契約のまま、現場を大工に任せっきりでその上に形ばかりの商品を作ってきた。そのことが施主と元請けだけでなく銀行や納材業者を巻き込んだ複雑な与信関係の輪を作り、今日の怪しげな商習慣、制度が生まれる結果となり、様々な問題や事件を引き起こしてきた。
ものづくりの標準化では、今日ようやく四号建築物の特例廃止がいま俎上にあるが、木造住宅の大多数を占める「いわゆる在来型工法」では、現場の標準化が何ひとつ整っていない。木造住宅については地域、大工個人によってさまざまな規矩、架構、納まり術が千差万別であり、基準法や告示はそれを追認する形で進んできた。
それは大工技術の多様性を並べただけであり標準化ではない。三番目の問題であるプレカットとも絡むが、現時点でもプレカット材の標準化や仕様統一が話題にならないことがそれを如実に示している。プレカット材の標準化や仕様統一ができるのであれば、架構方法も統一されるし、現場生産も担当する大工によって異なることはなくなる。生産性も上がる。さらに言えば施主との打ち合わせも早くなり営業生産性も上がるだろう。
しかし、こうした標準化が進まない一方で、安心・安全の観点から防火や耐震について厳しい法規制が行われてきた。特に阪神大震災以降、耐震性についてはことさらに厳しくなった。また今年から瑕疵担保責任履行法で保険等が義務化された。現場の検査なども一層厳しくなってきた。ただ検査基準がいくら厳格でも、こうした木造住宅が千差万別の価値判断で建築されているので、検査する側の能力は相当必要になっている。ところが、二番目の問題点として前述したように、経験豊富な技能を持つものや判断できるものはどんどん少なくなっている。それゆえ、こうした新しい制度を運用していく上からも、住宅生産を円滑にするための標準化が緊急に求められるようになっていると思う。

つまるところ、この4つの問題は、業界事情や慣習、さらには戦後構築されてきた、いわゆる「工務店」的なもの、「大工」的なものが如何にこれからの住宅産業の生存、発展に害をなすかを問うものである。
そしてまた、そうした弊害を排除して今後の住宅供給、現場生産は誰が責任を持ち誰が行うか。住宅業界が、新たな産業となるためには、いままであった「工務店」的なもの、「大工」的なものとの決別が必要とされている。

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