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木造住宅の市場動向

木造住宅の市場はいま、どうなっているか?
専門家にうかがってみました。

住宅産業への手厚い補助金の意図は?
住宅ジャーナリスト・福原正則

補助金の嵐である。住宅版エコポイントをはじめこの欄で何度か国の住宅関連の補助金について話題にしてきたが、ちょうど来年度の予算が決まる時期であり、またぞろぞろと補助金の公募が始まっている。筆者は20年以上住宅行政の動きを見てきたが、これほど住宅に手厚く補助金や税制優遇が行われるのは見たことがない。業界に長く携わってきた人ほどそれを強く感じるはずだ。
住宅施策の中心となっている国交省関係だけでも相当な数になる。今ある大きなものだけでも拾ってみると、次の通りすぐ出てくる。
・地域材活用木造住宅振興事業
http://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/mokuzou/chiikizai.html
・長期優良住宅普及促進事業http://www.cyj-shien.jp/index.html
この二つは現在実施されているもの。長期優良住宅促進事業は、エントリーした認定住宅の建設に100万円の補助金が出るもので、来年度も「木のまち・木のいえ整備促進事業」として継続されることになっている。
・平成22年度住宅・建築関連先導技術開発助成事業
http://www.mlit.go.jp/report/press/house04_hh_000121.html
3月5日に公募が締め切られたが、二分の一補助で最高1億8000万円まで補助されるもので、省エネ、リサイクル、安全などの先導的技術開発を支援するもの
・長期優良住宅先導的モデル事業http://www.kenken.go.jp/chouki/
・ 住宅・建築物省CO2推進事業http://www.kenken.go.jp/shouco2/
・ 住宅・建築物省エネ改修推進事業
http://www.kenken.go.jp/shouenekaishu/index.html
・高齢者等居住安定化推進事業
http://www.mlit.go.jp/report/press/house03_hh_000030.html
これらは3月5日から公募が開始されたばかり。長期優良住宅先導的モデル事業、省CO2、省エネ改修推進は一昨年から毎年継続しているものだ。
これに加えて、ローン金利の優遇、各種税制優遇、今年は住宅取得等資金贈与の非課税措置の拡大などもある。さらに、直接的な補助ではないが、各都道府県で行われる無料の講習会なども公的団体への助成で行われている。
加えて、経産省関係では今年NEDOの住宅省エネの補助金が復活する。そのほかにも太陽光発電や省CO2機器など、住宅関連への補助金は探せばぞろぞろ出てくる。さらに地方自治体からも補助金も多いが、その中には国の補助金から出ているものも多い。
この他では、地域材(本当は国産材と言いたいのだが、国産材は非関税障壁的な言葉なので使わないのだそうだ)の需要拡大のために林野庁関係でも多くの補助金が出ている。特に非住宅の分野では学校などの公共施設の木造化に対する助成が、今後大きく動き出す勢いだ。

ここで本題に入ろう。なぜ、住宅がこれほどまでに手厚く支援されるのだろうか?
「何を言っているのだ。鉄鋼でも電機でも自動車でも、たっぷり補助金をもらって大きくなったではないか」という声が聞こえてきそうだ。しかし、住宅産業もかつては毎年供給される住宅の半数が住宅金融公庫のローンを受けていたわけで、ある意味で産業全体が助けてもらいながら、住宅産業として大きく成長してきている。そのお陰で公庫は莫大な赤字を垂れ流し、今日の状況を迎えたわけだ。こうした経緯の上にさらにまた、ここにきてもう一段、手厚く補助金が出されるというのは単に国内経済を良くするためだけの景気対策なのか、ということである。
そう考えると、余りにも補助金対象の条件がそれぞれ厳しいと感じざるをえない。一番気楽な条件は住宅版エコポイントだけである。このエコポイントは、明らかに景気対策だろう。一方、冒頭で挙げた補助金は、実際取り組むとなるとなかなか面倒である。一番簡単そうな長期優良住宅普及促進事業にしても、ただ認定を取って建設するだけで補助金がもらえるものだが、昨年の5000棟の補助金枠を達成するのに、思った以上に時間がかかった。対象の小零細工務店にとっては、そうした認定を取ることさえ結構難しく、手続きも煩雑なのだ。
だから、今ある補助金は、かつてハスウメーカーから中小工務店まで平等に恩恵を受けた公庫のローンと同じではないことを肝に銘ずるべきである。申し込むだけではもらえないのだ。国の施策の明らかな意図があるのだ。長期優良住宅という言葉に集約されるように住宅性能の向上に加えて、瑕疵保険の義務化にみられるように、性能を実現するための現場施工品質の向上が求められているのだ。そうした意図のまな板の上に、これらの補助金という魚が載せられている。我々業界はそのまな板の上でどのような包丁さばきを見せるかが問われている。下手なさばきでやってしまえば、折角のおいしい魚は口に入らない。
ただこうした補助金行政は問題も多い。新たな事務機関の登場と業務の煩雑さである。
筆者もある団体で補助金業務を担当し、事務機関との折衝で貴重な経験をした。そこで思ったのは「補助金というみんなの税金から支払われるものを正しく使わなければいけないが、そのために補助金よりも事務手続きにより多くの税金が使われるようなことがあれば本末転倒ではないか」という点だ。何とかならないものか。

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