ここで本題に入ろう。なぜ、住宅がこれほどまでに手厚く支援されるのだろうか?
「何を言っているのだ。鉄鋼でも電機でも自動車でも、たっぷり補助金をもらって大きくなったではないか」という声が聞こえてきそうだ。しかし、住宅産業もかつては毎年供給される住宅の半数が住宅金融公庫のローンを受けていたわけで、ある意味で産業全体が助けてもらいながら、住宅産業として大きく成長してきている。そのお陰で公庫は莫大な赤字を垂れ流し、今日の状況を迎えたわけだ。こうした経緯の上にさらにまた、ここにきてもう一段、手厚く補助金が出されるというのは単に国内経済を良くするためだけの景気対策なのか、ということである。
そう考えると、余りにも補助金対象の条件がそれぞれ厳しいと感じざるをえない。一番気楽な条件は住宅版エコポイントだけである。このエコポイントは、明らかに景気対策だろう。一方、冒頭で挙げた補助金は、実際取り組むとなるとなかなか面倒である。一番簡単そうな長期優良住宅普及促進事業にしても、ただ認定を取って建設するだけで補助金がもらえるものだが、昨年の5000棟の補助金枠を達成するのに、思った以上に時間がかかった。対象の小零細工務店にとっては、そうした認定を取ることさえ結構難しく、手続きも煩雑なのだ。
だから、今ある補助金は、かつてハスウメーカーから中小工務店まで平等に恩恵を受けた公庫のローンと同じではないことを肝に銘ずるべきである。申し込むだけではもらえないのだ。国の施策の明らかな意図があるのだ。長期優良住宅という言葉に集約されるように住宅性能の向上に加えて、瑕疵保険の義務化にみられるように、性能を実現するための現場施工品質の向上が求められているのだ。そうした意図のまな板の上に、これらの補助金という魚が載せられている。我々業界はそのまな板の上でどのような包丁さばきを見せるかが問われている。下手なさばきでやってしまえば、折角のおいしい魚は口に入らない。
ただこうした補助金行政は問題も多い。新たな事務機関の登場と業務の煩雑さである。
筆者もある団体で補助金業務を担当し、事務機関との折衝で貴重な経験をした。そこで思ったのは「補助金というみんなの税金から支払われるものを正しく使わなければいけないが、そのために補助金よりも事務手続きにより多くの税金が使われるようなことがあれば本末転倒ではないか」という点だ。何とかならないものか。