
しかし、新築住宅そのものへの期待はますます望み薄の状況だ。前述したように断熱材、断熱サッシ、エコ関連、設備関連メーカー、非住宅の木造建築関連のプレカット、設計、施工などの分野は時代の波に乗ってきた。一方業界を支えてきた住宅の新築市場は、安価な分譲住宅と高価格帯の注文住宅になり、大手住宅会社や地域ビルダー・工務店が得意のいわゆる“注文住宅”(イージーオーダー型住宅)はなくなりそうだ。つまり市場の中心であった中間帯、ボリュームゾーンが消滅しつつある感じになってきた。
そうした新築住宅市場への期待感喪失を決定づけられたのが、国が発表した新成長戦略である。そのなかで「ストック重視の住宅政策への転換」を掲げ、中古住宅流通市場やリフォーム市場を10年間で2倍にしようというのである。最近のリフォーム市場規模はざっと6兆円、新築の住宅投資は14兆円程度である。つまり、これから新築住宅がどんどん少なくなっていっても、入れ替わりにリフォーム市場が倍になれば住宅産業の規模は維持できるというわけである。加えて中古住宅流通市場の活性化である。これを加えれば、住宅産業はこれまで以上に発展するとしているのだ。
現在の中古住宅流通の状況は、(社)不動産流通経営協会よれば09年の自己居住用の住宅では新築が45万戸に対して既存住宅の流通量推計値は46万件に達し、新築に匹敵するようになったとしている。中古住宅が1戸どれくらいの金額で取引されているか明確な数値が明らかでないので、ハッキリとしたことは言えないが、数量的には数年前の倍の量となっている。これを倍増させようというのであるから、10年後には年間ざっと100万戸である。
リフォーム業界では最近大規模改修の事例が多くなっている。金額的にも1000〜2000万円台で新築に匹敵する工事額となっている。これからリフォーム市場と中古住宅流通市場が大きくなる中で、こうした大規模改修の市場も大いに期待される。これが、今後の住宅建築市場の中心的な仕事になる。そう考えないと、新築住宅に携わってきた業界の生き残りはない。来年の話となると、新築住宅では全く先がない話となるが、新たなリフォーム市場、中古住宅流通市場の拡大を考えれば、新築に替わる大規模改修市場のスタートであり、2011年はその元年になるのではないかと考える。