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木造住宅の市場動向

木造住宅の市場はいま、どうなっているか?
専門家にうかがってみました。

急がれる業界一丸となった工法の
標準化とルールづくり。 
住宅ジャーナリスト・福原正則
前回の続きを話したいと思う。前回は5年後(正確にはあと4年後の国勢調査の時点)には大工人口が30万人となって、現場生産が大変なことになると述べた。筆者の計算では、30万人の大工が1年間で生産できる最大生産量(大工人口の半分で計算)は58万戸。震災復興、今後の政策支援によるリフォーム市場の倍増、消費税アップ前の駆け込み需要など、これからの5年間は住宅需要のマイナス要因が見当たらない状況で、この大工の減少は新築現場、リフォーム現場で生産の障害になると指摘した。
そんなことを指摘するまでもなく、最近人手不足の話題が全国各地から相当聞こえてくるようになった。被災地の仕事状況は確かに「超」の付く忙しさであるし、住宅着工も十数ヶ月連続で伸びているので、需要があれば人手不足になるのは当たり前だ。しかし現場の声をよく聞いてみると、職人が「足りない」のではなく、「全くいない」ということを実感する。これは大工だけでなく職人全体でも同様である。それでも現状は何とかやっているのだから、その延長でこれからも何とかやっていけるだろう、と言うのが業界みんなの気持ちだ。
 前置きはこれくらいにして、前回の続きとして10年後、2020年の大工人口はどうなるかを更に検討してみた。結論から言うと、このまま大工の育成や彼らの大幅な収入増をはからず、現状の仕組みのまま何もしなければ、大工人口はわずか20万人になってしまうのである。
これは過去の国勢調査を元に単純に全体の増減率を掛けて出したものではなく、年齢階層別(国勢調査では15歳から85歳以上まで15階層で人数を集計)に、次の調査時点の5年後にその階層がどれくらい増減したかを調べてシミュレーションしたものだ。これを見ると、15〜19歳の階層が次の20〜24歳の階層になると人数が倍増する。これは過去3回の国勢調査でも明確に出ている。大工への入職時期が中卒・高卒だけでなく、20歳以降にもあるということを示している。それ以降は、次の年齢階層に移るたびに10数%減少していき、60〜64歳の階層になると25〜30%減少し、それ以降は6〜8割減少となり、大工人生は終わる。
我々が実感として、そんなに減っていないという感じを持つのは、働き盛りの25〜59歳の各年齢層間の減少が10数%であるからだ。40歳前後の働き盛りの大工仲間10人いれば、5年後にやめているのは1〜2人ということだ。これでは中々自分たちの商売が急にダメになったとか、これからダメになるとは思わないだろう。こうした年齢層間の減少傾向がこの15年ほど続いている。
 しかし、この方法で計算すると2010年の大工人口は42万9000人となった。国勢調査の速報値は39万7000人だったから、現実はシミュレーションを超える減少を示したのだ。筆者の計算によると2015年は30万8000人、2020年は22万8000人という予測だが、団塊世代の完全リタイア、入職者のさらなる減少などを考えると、この数字を大きく下回ることも考えられる。

そうなると、10年後の住宅の現場生産能力はどうなるのか。木造住宅に換算すると、大工1人で年間150坪と生産性が向上しても、仮に20万人全員でやったとして3000万坪、80万戸程度しか生産できない。大工の活躍の場は木造住宅だけでなく、ビル・マンション、店舗、リフォームなど幅広い。特に今後増大が予想される大規模リフォームではベテランの大工が大量に必要になる。マンション等での生産性は木造住宅の倍以上であり、リフォームではその逆なので、どこまで現場生産力が不足するかはすぐには測りがたいが、それぞれの分野で今以上の生産性向上を図らなければ対応できないことだけは絶対に確かである。
もし10年後に大工が15万人程度に大きく減少することにでもなれば、木造住宅の生産能力は実質的に20万戸程度しかなくなると危惧する。一方で、入職者は年間2000人程度でしかないので、余り多くは期待できない。
これからの10年間を見れば、住宅、公共建築物、リフォームなど需要は旺盛である。その中で職人の急激な減少で現場生産は危機的状況が続いていく。それに対して、業界はどう対応しなければならないのか。
考えられる対策は2つしかない。一つは緊急且つ大量な職人または新たな現場作業者の育成である。もう一つは1人当たりの生産性向上(倍増以上)である。しかし、現実的な対策はたった一つしかないことは、実際に現場で働いてきた皆さんなら分かるはずである。
職人、特に大工を即席で育成することは不可能であるからだ。これまでは最低でも5年の修行期間だったし、10年でようやく一人前だ。現在はプレカットの普及で、現場から丸鋸やプレーナーが姿を消した。そのうち金槌さえなくなってしまうような現場作業である。そんな最近の現場環境でどれだけ大工としての基本を身につけられるのか甚だ疑問だ。
そうなると期待は、現場の生産性向上でしかない。つまり大工など現場作業者の生産性を倍以上にすることだと思う。こちらの方が実現性が高い。これまで何度か述べたことがあると思うが、大工の一日の木造住宅の現場生産量は、従来は0.3坪から0.7坪くらいの間だ。例えば40坪の家を建てる場合、大工の人工歩掛かりは60〜130人工程度のはずだ。最近では45日程度で大工工事が終わるものがあるから、1人工1坪の生産に近づいている。しかし、かつてプレハブ住宅の向上を調べたことがあるのだが、工場の生産性も1人工1坪程度である。それでは間に合わないと言うくらいの職人の減少なのである。
であれば、どうやって現場生産性を倍増以上にしていくのかである。これまで木造住宅では様々な合理化工法が生まれてきた。しかし、ここで述べているような大工の生産性を大幅に向上させることが出来る工法は生まれていない。なぜなら大工1人工1坪という壁を越えるものがほとんどないからだ。理論上や現場環境が整ったものでは可能かもしれないが、一般の施主から受注した注文住宅などにシフトすると中々乗り越えるのが難しい壁なのである。
乗り越えるヒントは、施工方法の標準化と部材の規格化である。つまり2×4のようなスタンダードな仕組みを再構築し、その上で新たに施工者の作業歩掛かりを規定し、新しい木造住宅とすれば現場の生産性は必ず倍増以上すると考えている。そのためには業界が一丸となって、標準化に取り組まなければならない。みんなでルールを作ってちゃんと守るというのが一番の近道なのだと思う。このルールは苦痛を伴うルールではなく、逆に利益をもたらすルールであると思うのだが。

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