
この頃散歩しているとやたらに目につくのは、犬を散歩に連れて歩く人々ではなくて、しゃれた店構えのペットクリニックだとか、ペットホテルなどである。またペットメモリアルショップ(葬儀、遺骨・位牌保管施設)なども目につく。
ペットフードなど関連市場は富士経済の調査によると最近では4000億円市場で、他の産業から見るとうらやましいほど成長し続けている市場だ。ペットの二大勢力である犬と猫の数も、ペットフード協会によると、平成14年では犬952万頭(全世帯での飼育率16.7%)、猫712万頭(飼育率10.7%)だったものが、10年後の平成24年では犬1153万頭(飼育率16.8%、平均飼育頭数1.3頭)、猫975万頭(飼育率10.2%、平均飼育頭数1.8頭)と、それぞれ1000万頭ラインに到達している。
この10年間、世帯数の増加とともに市場は安定的に拡大しているのだ。だから成熟市場としてサービスも多様化しているわけで、色々な店が目立つようになった。主力商品のペットフードはコンビニでも売られるほど普通のものになったし、大切な「家族の一員」を小汚い犬猫病院などへ通わせる親もいなくなった。
また、最近の調査では50才代での飼育率が最も多く(犬21.4%、猫12.1%)、次いで60才代で、高齢層でのペットのニーズの強さが見える。今後飼育したいという希望は、犬で 30.4%、猫で18.2%となっており、飼育意向のある人の数は、現在飼育している人の約 1.8 倍だ。今後もペット市場は大きな潜在需要があり期待されているというわけだ。
成熟市場でこうした成長が期待できるところは他に何があるだろうか。自動車産業だろうか。国内販売台数を見ると平成14年が579万台、平成24年が537万台とこの10年間5百数十万台で推移したかに見えるが、リーマンショックや震災の影響などで後半は大幅に落ち込んでいた。それがエコカー補助金などがあり持ち直したのだ。最近絶好調の軽自動車は、この10年間180万〜200万台の間で推移。こちらもリーマンショックで170万台に落ち込んだものの、普通車よりも安定的な推移だ。
さて、同じ成熟市場の住宅産業はどうだろうか。少子高齢化の中、市場縮小が明らかな分野だ。自動車と同じようにバブル崩壊、リーマンショックなどで大幅に落ち込んだ。国も市場回復のため、この欄で何度か紹介したとおり様々な補助金をつぎ込んできた。今は消費税増税前の駆け込み需要で大忙しだ。ここ数年70〜80万戸で推移していた年間着工数が、今年は100万戸に達する勢いだ。しかしこの10年間を見ると平成18年の128万戸をピークに大きな振幅の中にあった。新築に比べてリフォーム市場は平成14年5.61兆円で、平成23年は5.25兆円である。この分野もリーマンショックで4.4兆円まで落ち込んだが、その後は回復し、新築と同じように市場はいま大忙しである。
と、3つの市場を並べてみたが、これからも堅調な市場はペット市場のように見受けられる。この様な市場は探せば他にも沢山あるだろうが、成熟化のなかでの伸び方と言う点では、ペット関連がまだまだ市場性がありそうだ。
そんなペット市場で今「ワン高ニャン低」なのだという。商品開発や供給では常にワン=犬関連のものが次々と新しいものが生まれている。犬のエステや生活習慣病対策商品、その他ケア、サービスなどが次から次と生まれているのだとか。それに対してニャン=猫関連では、精々キャットフードの高級化くらいで、猫を対象にした商品開発が遅れている。ワン高ニャン低である。確かに自由気ままな猫を相手に商品開発をしても、なかなか上手くいくとは想像し難い。猫が飼い主の言うことをちゃんと聞くようになるまでは、市場のワン高ニャン低は変わりそうにない。