具体的な狙いは、中古住宅の資産評価の基準を業界と共に変えていこうということなので、「本当にできるの」という声も聞こえてくる。しかし住宅建設は40数年前から世帯数よりストック数のほうが上回っていた。住宅余剰のなかで営々と年間100万戸以上建設されてきたのだ。お陰で現在空き家率は13%を超え760万戸以上だ。このまま新築住宅を作り続けていけば空き家率が20%を超えるのは時間の問題だから、我々はこれからも新築需要が同じようにつづくというようなそんな甘い考えを捨てなければならないと思う。
ただ、中古住宅・リフォームの活性化では、大元の不動産業界やリフォーム業界の抵抗が大きいのは事実である。現状の商売の仕方を変えなければいけないからだ。そんな事は、どの時代、どの業界でも起きてきたことで守旧派となるか革命派に身を投じるかの違いだと思う。これは日本の不動産業、住宅産業に大変革を起こすテーマであると筆者は思っているが、国交省では今年もこのラウンドテーブルで議論を深め具体的な方策の検討をするとしている。
最後に、皆さん「なんだ、新築とあまり関係ない話題だ」なんて思っていないだろうか。この議論は、今皆さんが建築している性能評価住宅や長期優良住宅に大いに関係があるのだ。
国では政策を作るために様々な学者や業界関係者を集めて委員会を開催し様々な問題を検討している。今回のラウンドテーブルでは、国交省がこれまで開催してきた委員会の集大成という感じがするのだ。特にここ2、3年行われた、中古住宅・リフォームトータルプラン委員会、不動産市場活性化フォーラム、既存住宅インスペクション・ガイドライン検討委員会などの成果を踏まえている。その1つに、「中古住宅に係る建物評価手法の改善のあり方検討委員会」というのがあって、中古戸建て住宅の評価手法の改善に向けた検討を行ってきた。これも3月末に「中古戸建て住宅に係る建物評価の改善に向けた指針」を策定した。
指針では、中古住宅の内容を基礎・躯体・内外装・設備の4つに大きく分類。基礎・躯体については、20年以上の長い耐用年数を設定しているが、そのなかで「長期優良住宅であれば100年超の耐用年数とすることを許容する」、「基礎・躯体部分の機能が維持されている限り、リフォームを行った場合は住宅の価値が回復・向上するととらえて評価に反映する」などとしている。
つまり、この記事の前段で長々と述べてきた「住宅資産価値」やその価値の「維持・向上」のためのリフォームをする大前提、源泉は「基礎・構造躯体」がしっかりしていることなのだ。工務店やプレカット工場等、今現場に携わる皆さんは、「長期優良住宅は100年超の耐用年数」について、現状と比較してどう判断するだろうか。 KD材や集成材の普及はよい方向だろうが、構造に関して耐震はよしとしても100年もの長期荷重に耐えられる構造となっているか、はなはだ心配である。壁体内結露なども気になるところであるが、いずれにしても今後の流れが新築からリフォームの時代になったと言っても、元は新築住宅をしっかり作らなければならないということでは変わらない。
新築は、一方でお客の要望なのか怪しげな構造が多くなっているが、「100年超の構造躯体」は新たな市場を作るかも知れない