住宅や住宅業界は、この数十年寒さや狭さの解消、快適な家事環境を求めて様々に進歩してきた。その結果できあがった住宅が200年住宅、長期優良住宅である。いまどきはパッシブハウス、ゼロエネルギー住宅など、さらに進歩しているが、我々がその過程で失ってきたものも非常に大きい。
住宅は都市化と核家族化によって住宅単体として成り立ってきた。それゆえに単体としても商品化も進み、性能だけが突出してきた。本来住宅は、今風の言葉で言えば「地産地消」のたまものであり、資材も技能も労働力も生活習慣も全て詰め込まれていた。そうした地域社会からの恩恵が、今の住宅のどこに残っているのか。全てを余所から持ってきて作られるのが当たり前となった。わずかな恵みは地域材の利用だが、これすら補助金がつかないと使ってもらえない。最後の砦である地域からの労働力も、この欄で何度か訴えてきたように、急激に減少してきているので、それすら難しくなった。
こんな21世紀的な地域社会と住宅の関係では、長期優良住宅をいくら作ったところで、ものの20年で朽ち果てていく。そんなことでは、人々の新たな住まいへの思いを何一つ満足させることは出来ない。
そうさせないために、まず必要なことは、中古住宅としてさっさと売り払うことではなく、家族や地域社会に支えられて維持できる住宅となることである。そして、その家族や地域が継続できるようなコミュニティーを作ることである。コミュニティー性能の高い住宅とはそのようなものではないかと思っている。
具体的にどのようなものかを考えてみると例がないでもない。今住宅業界ではスマートハウスが大きな話題である。しかし、ご存じのように1戸の家だけでは電力の有効活用も省エネもたかだか知れている。地域全体として取り組めば効率的な電力供給や節電、省エネに大きな効果が得られる。スマートシティーやスマートタウンの計画が各地で動き出しているが、実際の計画としてはその方が先行している。また、そんな大仕掛けなものでなくてもいい。子育てや老人ケアを組み込んだものでもいいし、同じ趣味の人々が集まりやすい物でもいい。その地域によってコミュニティー性能はいろいろあるだろう。さらには、建物性能や利用へのアイデアだけでなく、所得が伸びない時代であるので、コーポラティブハウス的な建築資金調達でのコミュニティー性能の向上など、これまでも試されてきたような様々なアイデアが活かされるのではないかと思う。
21世紀的な大きな社会変化に対応できる住宅性能とは、そうしたコミュニティー性能ではないかと考え始めている。