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木造住宅の市場動向

木造住宅の市場はいま、どうなっているか?
専門家にうかがってみました。

2012年、住宅関連業界にかつてない
大きな変化が。 
住宅ジャーナリスト・福原正則
新年明けましておめでとうございます。
さて、年末から厳しい寒さが続いているが、今年はどんな景気となるのだろうか。
特に住宅関連業界は、21世紀のこれまでとは全く異なる社会変化にやっと直面する年になるのではないかと思っている。そのきっかけとなるのは、良いか悪いかは別にして、昨年の東日本大震災であると思う。かつてないすさまじい経験が私たちの心の奥底を揺さぶった。大震災の地域、被災者の皆さんの苦悩、復興に全力を尽くされている方々の努力に心痛め、また力づけられた。一方、被災地、被災地以外に関わらず、多くの人々にとってそれは、現代に生きることの意味と自分の人生を重ね合わせることで、様々な問題意識が新たに芽生えた年ではなかったか。そして今年は、そんな反省の上に立って新しい年を迎えた。表面上は何も変わっていないが、それぞれが震災で感じた思いが表れてくるのがこれからだと思う。
住宅産業は、生活の基盤である住まいを提供するものである。「衣食足りて礼節を知る」という言葉があるが、衣食足りて、さらに住足りた今日、礼節をどこまで知るようになったかは甚だ疑問な世の中である。住宅産業は、その中で数十年発展を遂げてきた。そのなかでバブルが崩壊し、阪神大震災、大水害、悪徳住宅業者などなど、様々なことが起こってきたが、住宅は常に人々に希求され続けてきた。住宅産業はこうしたことの上に花開いた産業である。しかし今回の巨大地震で、津波で流される家々や原発事故で無人と化した町並みを見るにつけ、多くの人々が感じたことは「家とは何か」「暮らしとは何か」と言うことであったと思うのである。
そうした心の奥底に新たに芽生えた思いが、これからの住宅購入やリフォームに対して本当に大きな影響を投げかけてくると思うのである。不動産業界や住宅業界では、震災後、高層マンションや沿岸部の住宅がぱったり売れなくなったり、耐震診断や改修が激増したが、そんな表面的なことに踊らされてはいけない。それよりも、これからの若い世代は家庭をどう作っていくのか、中高年はどのような老いの姿や場が必要なのかというような、建物の性能とは余り直接には関係しない“人と人の繋がりとしての住まいの環境”を強く求め始めているように感じるのだ。
今年は、そうした新たな思いの市場環境とでも言うようなものが、住宅業界の前に何とはなしに出現するだろうと思う。今まで住宅の価値は、その土地の値段と建物単体の性能・グレードでほぼ決まってしまっていた。これらかの住宅市場で最優先される住宅価値は、その地域社会の一員としての住宅・住宅所有ということではないかと考えている。つまり、「コミュニティー性能」という言葉があるとすれば、そのコミュニティー性能の高い住宅が求められてくるように思うのである。


住宅や住宅業界は、この数十年寒さや狭さの解消、快適な家事環境を求めて様々に進歩してきた。その結果できあがった住宅が200年住宅、長期優良住宅である。いまどきはパッシブハウス、ゼロエネルギー住宅など、さらに進歩しているが、我々がその過程で失ってきたものも非常に大きい。
住宅は都市化と核家族化によって住宅単体として成り立ってきた。それゆえに単体としても商品化も進み、性能だけが突出してきた。本来住宅は、今風の言葉で言えば「地産地消」のたまものであり、資材も技能も労働力も生活習慣も全て詰め込まれていた。そうした地域社会からの恩恵が、今の住宅のどこに残っているのか。全てを余所から持ってきて作られるのが当たり前となった。わずかな恵みは地域材の利用だが、これすら補助金がつかないと使ってもらえない。最後の砦である地域からの労働力も、この欄で何度か訴えてきたように、急激に減少してきているので、それすら難しくなった。
こんな21世紀的な地域社会と住宅の関係では、長期優良住宅をいくら作ったところで、ものの20年で朽ち果てていく。そんなことでは、人々の新たな住まいへの思いを何一つ満足させることは出来ない。
そうさせないために、まず必要なことは、中古住宅としてさっさと売り払うことではなく、家族や地域社会に支えられて維持できる住宅となることである。そして、その家族や地域が継続できるようなコミュニティーを作ることである。コミュニティー性能の高い住宅とはそのようなものではないかと思っている。

具体的にどのようなものかを考えてみると例がないでもない。今住宅業界ではスマートハウスが大きな話題である。しかし、ご存じのように1戸の家だけでは電力の有効活用も省エネもたかだか知れている。地域全体として取り組めば効率的な電力供給や節電、省エネに大きな効果が得られる。スマートシティーやスマートタウンの計画が各地で動き出しているが、実際の計画としてはその方が先行している。また、そんな大仕掛けなものでなくてもいい。子育てや老人ケアを組み込んだものでもいいし、同じ趣味の人々が集まりやすい物でもいい。その地域によってコミュニティー性能はいろいろあるだろう。さらには、建物性能や利用へのアイデアだけでなく、所得が伸びない時代であるので、コーポラティブハウス的な建築資金調達でのコミュニティー性能の向上など、これまでも試されてきたような様々なアイデアが活かされるのではないかと思う。
21世紀的な大きな社会変化に対応できる住宅性能とは、そうしたコミュニティー性能ではないかと考え始めている。


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