
住宅産業の様相が一変した。毎年この時期になると、来年はどうなるのだろうかと期待と不安が交錯するのであるが、しかし来年は、何のためらいも無いと思う。それくらい昨年一年間の動きは急激であった。
業界の基本指標である新設住宅着工数を見ればそのことは歴然である。09年度の住宅着工は80万戸すれすれの状況だが、3年前の07年度は128万戸あった。たった3年で50万戸近く市場が縮小したのである。1戸2000万円としても10兆円の市場が消えて無くなったのである。昨年1年間だけでも4兆円市場が縮小した。これは最近の1年間のリフォーム市場規模にも匹敵する数字である。
実感として今年1年間は、新築市場の力がすっかり無くなったことをまざまざと思い知らされた年であった。そして、衰退産業となった新築市場に替わって住宅産業の新しい行く先がリフォームであることも誰もが認める年となった。だから来年からは何の迷いもなくリフォーム中心だ。まあ現状を見ればリフォーム市場も惨憺たる状況である。新築業界に比べていくらかましと言った程度だが、住宅産業のメインストリームは確定だ。
というのも、国の政策が明確にリフォームにシフトしたからだ。09年は政権が替わり公共事業の見直しや事業仕分けなどで大激変したが、新政権も住宅産業施策ではリフォームを中心に据えた。具体的な施策の中心はリフォーム市場の活性化、住宅の長寿命化と省CO2化などだが、目玉となるのは?リフォーム産業の育成?中古住宅の流通促進?住宅履歴・インスペクション(建物検査)の普及の3つだ。10年度の予算編成が行われているが、軒並みダウンの国交省の予算の中で数少ない増加組である。これらの環境・リフォーム推進事業関連の助成では330億円ほど予算要求されているがその内半分がリフォーム関連の支援となる見込みだ。
かつて持家政策を強力に推し進めて莫大な予算をつぎ込んできたことから比べれば非常に少ない予算だが、カジを切ったことの意味は大きい。日本の住宅産業は戦後の住宅不足の解消から高度成長期の持家政策の促進、そして最近の住宅の高性能化まで、すべて国の政策主導で進められてきた。その中で地域の生業であった住宅建築が全国を市場とする産業となり、工務店が成長し、ハウスメーカーが大企業となった。住宅産業にとって、今回の政策大転換もそうした意味を持つはずだ。